僕とオートバイ ４
モノクロームの時代
僕が生まれたばかりの写真はまだモノクロームだった
古いにおいのするそのアルバムに
一枚のセピア色の写真が残っていた
単眼のゴーグルに皮のジャケット
ちょうどグラブを手に取りはめようとしている
その写真からは今にもオートバイにまたがり
キックギアを踏み降ろす姿が目に浮かんでしまう
僕は彼からオートバイのことやツーリングの話など
詳しく聞いたことはほとんど無かったように思う
家に残っていたジャケットやマフラーなどを見て
僕は聞かずともそのことはどこかで理解していた
僕は生まれてくる時代が少し遅かったのかも知れない
僕の知らぬ間に組み込まれた遺伝子が騒ぎ出すたびに
単眼のゴーグル越しに見えていたその時代を
僕は夢中で追いかけていた様に思う
未舗装の道路に残された轍を頼りに
僕は彼の進んできた軌跡をたどっているのかも知れない
ただそのことだけを最後に伝えておきたかった
ちょうど一年前、僕は急ぐ列車の中でそんな風に思っていた
少し時代遅れな僕の思いは
いつもモノクロームに包まれている
2003,11,16
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