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『 Another Side からの手紙　＃１ 』

　”Another Side”を訪れてくださった皆さん、お元気ですか？
僕は今、秋深まるひなびた温泉宿で、毛布にくるまってこの手紙を書いています。

　今回の旅は、一人旅です。僕は一人旅が結構お気に入りです｡
僕は職業を尋ねられたときは、時々「旅人」と答えるようにしています｡
仕事と仕事の合間の休みに旅をしようと思っているのではなく、
一つの旅ともう一つの旅の合間に、僕は仕事をしているのだと考えています｡

　僕がまだ子供の頃、国語の試験の中で、ある論文に対する問いがありました。
その論文の主体は
「私たちは不幸と不幸の間のわずかな幸福に楽しみを抱いている・・・」
といった感じの文章だったのですが、僕はどうしてもその論文に納得ができず、
全ての問いに
「この論文は間違っている」
と回答し、先生に怒られたことがありました。
その頃の僕の小さな反抗だったのかも知れません。

　一人旅をしていると、僕はとびっきり素直になれるのかも知れません。
全ての日常をリセットして、僕は童心に戻れるのかも知れません｡
空が青いことや、土が暖かいことや、風がいざなくことや・・・
僕がまだ子供だった頃から、それら全ては変わることなく美しくいてくれます｡

　時にはふと涙がこぼれてくるときもあります。
陽が暮れて、鳥たちがねぐらに帰っていってしまうときや、
夜明け前、東の空が薄紫に染まるとき、
一瞬、なにも聴こえてこないときがあったりします。
それらは、独りぼっちでないと感じられなかったかも知れません。

　夏の終わり頃、僕のポストに手紙が舞い込んで来ました｡

　　「僕は　風になりたくて　旅に出た
　　　一人旅がいい
　　　友はバイクです
　　　こいつがいると　いつでも好きな時に　出かけられる
　　　仕事がきつい時　こいつと旅に出ることをイメ−ジするのだ！
　　　すると又　元気が出てくる
　　　今　僕は　風になっている
　　　そして　別の風が囁いた
　　　昨日　この旅情庵に来た時に　聞いた声だ
　　　”旅に出て　風が囁いたろ　　俺のことを思い出してくれ”
　　　と言った人がいた
　　　そう　あれから　もう１年にもなるのだ
　　　僕は一人旅が好きだ
　　　１年前も　そうして旅に出た
　　　そして旅先で沢山の友達ができた
　　　日常の僕を捨てて　旅では　別の人を演じられる
　　　それが楽しい
　　　そして　日常に戻った時　前と「少し」違った僕が居るのを発見した
　　　”一体　これは何だろう？”と最初は思った
　　　旅に出て　人と出会って　自然に触れて　人間として成長しているのかも知れない
　　　そう　きっと　そうに違いない
　　　これからも　ずっと風になるために　一人旅を続けたい」

僕はいつもこの手紙をポケットに詰め込んで、毎日頑張っていました｡
そしてやっと旅立ちのときが訪れました｡

　「僕は幸福と幸福の合間のわずかな不幸をうまくやり過ごしているんです」
子供の頃、僕はきっとそのことを伝えたかったのかも知れません｡

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〜October 2004　　Ｓ★ＭＯＴＯ〜