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『 Another Side からの手紙　＃１３ 』

　僕のとってもよく知る女性は、毎日寝る間もなく働いていました｡
朝の３時から食品工場で弁当を作り、昼間は町の工場で電線の皮をむき、
夜は寿司屋で器を洗う。

　たくさん残された借金の返済、育ち盛りの二人の子供、小さな家。
彼女はボロをまとい、文句も言わずに、毎日毎日働いていました｡
若くして腰が曲がっていました、頭は白髪だらけでした、手はひび割れていました｡

　長い月日が流れ、子供達は大きくなって家を出て行きました｡
彼女は小さな家に独りぼっちになりました。
時々子供が帰ってくると彼女はとても嬉しそうでした｡
知人からプレゼントされた黒いリバーシブルの帽子を、大切に大切にしていました。
擦り切れて毛玉が出来ても、大切に大切にしていました。
彼女は絵本がとても大好きでした｡

　小さな家、小さな家族、小さな手、小さな幸せ。

　近頃僕は、少しばかり仕事が忙しくて、休みが無かったり、寝る間が無かったり、
風邪をひいたりと、それぐらいのことですっかりへばってしまっていました｡
彼女に比べればほんの些細な忙しさです｡
小さな幸せが手のひらからこぼれていかないように、僕も頑張ってみようと思います｡
あともう少しだけ頑張ってみようと思います｡

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〜February 2006　　Ｓ★ＭＯＴＯ〜