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『 Another Side からの手紙　＃２０ 』

　僕の部屋には、一枚の古ぼけたオムニバス・アルバムがある。
そのレコードのＡ面には、当時のリッチー・バレンスの曲が収録されていた。

　リッチー・バレンスを知ったのは、僕が１９歳の頃だった。
その頃の僕は、進学もせず、就職もせず、朝から晩までアルバイトに明け暮れていた。
アルバイト先で知り合ったとても気の合う先輩と、毎日音楽の話ばかりしていたように思う。
僕はその彼からはとても影響を受けていた。
元々は「ｍｏｔｏ」と云う僕達の共通の音楽から話は始まっていた。
ボブ・ディランやザ・バンド、オールディーズ、モータウン、ビート・ジェネレーション、サリンジャー、ｅｔｃ
僕は彼からたくさんの音楽、詩、小説、ライフ・スタイルを教えてもらった。
僕と彼とは、ｍｏｔｏと銀次のようなフレンドリーな関係だった。
そんな中、彼の部屋で観た一つの映画がとても心に残っている。

　「ラ・バンバ」と云う映画は、５０年代に若干１７歳でこの世を去った、
リッチー・バレンスの物語だった。
ちょうど覚え始めたオールディーズ・ナンバーが色々と出てきたので
僕はワクワクしながらその映画に釘づけになっていた。
　リッチーはひどい飛行機恐怖症だった。悪夢にうなされるほどだった。
デビューから、瞬く間にスターダムに立ち昇った彼は、ツアー中の飛行機事故で
バディ・ホリー達と共にこの世を去ってしまった。

　この映画を観てから、僕は飛行機に乗れなくなってしまった。
本当のことだ。この先もきっと乗ることはないだろう。

　チャーター機に乗った彼は、凍える夜空の星になってしまった。
僕が生まれるずっと前の話だ。
僕がハンドル・ネームに「★」を付けているのは、その哀悼の意を含んでいる｡
この映画を観て、僕は友達を一人無くしたような気がしていたからだ。
僕は彼となら、きっと疎通のはかれるいい友達でいられたかも知れない。

　今夜、夜空の星を眺めながら、僕はあの頃を思い出していた。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〜June 2006　　Ｓ★ＭＯＴＯ〜