『 Another Side からの手紙 ＃２２ 』
僕は今、病室のきしむベッドに横たわりながらこの手紙を書き留めています｡
手術台の上で全身麻酔に少しの反抗を試みながら、やがて意識が消えてゆく中、
僕は昔よく聴いていた一つのスポークン・ワーズの断片を思い出していた。
大事なものだと知っているのに
君はそれを捨ててしまった
大事なものだと知っていたのに
君はそれを投げ出してしまった
気分をかえて 契約はどこかに捨ててしまえ
僕らはもっと夢を見ることができる
もし君が望み続けるなら
おはよう僕のメリンダ ごきげんいかがですか？
君ならばもっとうまくできたはずなのに
目の前のくすんだ夜明けに
あと少しだけ手が届かないだけさ
失うものばかり多すぎて
手にするものはほんの少し
君と同じ夢は見れないけれど
夏が来るまでには 傷もいえて
二人 リンゴとシナモンのようになかよし
時々思う
何が報われて 何が報われなかったのか
君を愛したい
けれど涙が止らない
僕らは未来への遥かな想いを胸に 旅に出る
いつか僕が死ぬとき
きれいな声が聞こえたらいいな
僕らはもっと幸せになれるはず
僕らはもっと陽気になれるはず
深い眠りから覚めると、僕のちっぽけな臓器は一つ摘出されていた。
意識がはっきりしてゆくに連れ、接着された傷口が痛み出し、高熱が僕を締めつけた。
僕の鼻、腕、背中、そして下腹部から繋がったいくつものパイプ群、
体力の回復と共にそれらは一本ずつ取り除かれていった。
僕はリブートしてゆく無数の細胞と小さな対話を試みながら、心の中で唱えていた。
まともでいさせてほしい
まともでいさせてほしい
地下での潜水生活はもうこれでおさらばだ、これから何をしよう。
断片的に保存されたフォトグラフを整理しようか、
書きかけのテキストの続きを綴ってみようか。
埃のかぶった古いレコードを聴きなおしてみようか、
それとも、積み上げられた沢山の本に目を通してみようか。
少なくともキック・ペダルを踏み降ろすには、少し時間がかかりそうだ。
僕は再びここに戻ってくることが出来た。
いろんな関わりある人達のメッセージがとても励みになった。
いろんな関わりある人達に少し心配をかけてしまった。
いろんな関わりある人達に知らせなかったことも少し心苦しかった。
ＴＩＭＥ ＯＵＴ！
僕は再び「ド・レ・ミ」から始めてみようと思います｡
速すぎる時の流れに、少し休養が必要だったのかも知れません｡
蝉が鳴き始める頃までには、僕のリハビリ生活も済み、
入道雲の空の下、君との約束の場所で、再び出会えたら嬉しいな｡
〜July 2006 Ｓ★ＭＯＴＯ〜