『 Another Side からの手紙 ＃３１ 』
− Ｄｅａｒ Ｙｏｕ −
僕は今、劇場を後にし、揺れる列車の中でこの手紙を書き留めています｡
パンフレットにたくさん掲載された、練習風景の１コマ１コマの写真を眺めていると、
さっきまで僕が観ていたステージのワンシーンが少しずつ甦ってきます｡
夏の終わり、君から舞台公演の案内をもらった時から、
僕は必ず今回は劇場を訪問しようと心に決めていました｡
１０数年ぶりに君に逢えるのをとても楽しみにしていました｡
君と僕と仲間たちとで騒いでいたあの頃が、ついこの間のように思っていたけれど、
時が経つのは早いもので、気がつくと今日まで沢山の季節が廻ってしまいました｡
開演のブザーが鳴り、客席照明がゆっくりと落ちてゆきます｡
プロローグが終わり、ストーリーが進んでゆくと、
舞台の上手から懐かしい声が僕の耳に飛び込んできました｡
僕は心の中で大きな拍手を贈っていました｡
「君よ、頑張れ！」
君はスポットライトを浴びながら、走り、笑い、叫び、怒り、泣き喚き、
僕や他の観衆をサンダカンの浜に連れて行ってくれました｡
あまりの迫真の演技に、僕は時間の経つのも忘れ、
普段心のすみっこに眠っている感情がふつふつとあふれ出てきました｡
幕が下り、劇場が明るくなった後、僕はしばらくシートにもたれたまま
舞台の向こうをずっと眺めていました｡
客席を離れ、会場から流れ出す観衆にもまれながら、僕は君の姿を探していました｡
舞台に立ち、なんだかとても遠い世界に行ってしまったような気がしていたけれど、
長い階段の途中で、衣装のままで笑っている君と久しぶりに少し話せて安心しました｡
あの頃と同じ笑顔の君がそこに居てくれました｡
パンフレットに載っている稽古場で、歯を食いしばりながら君が流したいくつもの汗は、
サキの言葉や想いを通じて、僕や観衆の涙に変わってゆきました。
僕は今回、君からたくさんのパワーをもらったような気がします｡
ありがとう。これからも応援しています｡頑張って下さい｡
いつかまたどこかの劇場で逢えればうれしいな。
〜October 2008 Ｓ★ＭＯＴＯ〜