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『 Another Side からの手紙　＃４２ 』

- IDEN & TITY -

　２０代の頃、僕は友達のアパートから一冊の本を借りていた。
その本には、ディランに憧れ、日本のシーンでロックに苦悩する若者の事が描かれていた。
僕がディランのファンであったことは彼女は知っていたので、しばらく私物の様にずっと
僕の本棚にその本はならべられていたが、彼女は何も返却の催促はしてこなかった。

　その頃僕は、時々彼女に向けて手紙のような詩のようなメッセージのような文面を送っていた。
「ＩＤＥＮ　＆　ＴＩＴＹ」を読んで感銘を受けた僕は、同じ題名の手紙を当時彼女に送っている。
（僕のサイトのＮＯＩＳＥにその文面が掲載されています｡）

追伸　「ＩＤＥＮ　＆　ＴＩＴＹ」は、僕の大切なバイブル
　　　「ライ麦・・・」と同じく自分自信とオーバーラップするものが
　　　ありました。
　　　感謝します。

　手紙の追伸にもあるように、本当に僕自身とオーバーラップするものが感じられた。
社会に出て、偽善者に囲まれて、僕も愛想笑いしている自分が嫌いな頃だった。
自分の中のアイデンティティが他人に犯されたり、批難されたり、理解されないことが
本当に憂鬱に思っていた頃だったのかも知れない。

　３０代になり、僕はウェブ・サイトを立ち上げ始めていた。
僕がウェブ・サイトを始めたのは、どこにも僕が見たいウェブ・サイトがなかったから
自分でサイトを立ち上げてみようと思ったのがきっかけだ。
その頃、「ＩＤＥＮ　＆　ＴＩＴＹ」が映画化されることを僕は知った。
結局僕は、当時それを劇場で見ることはなかった。

　先日、僕はレンタル店で偶然にも「ＩＤＥＮ　＆　ＴＩＴＹ」のＤＶＤを手にしていた。
原作を知っていたので、映画化されるとよく期待外れの場合が多いので、それ程期待せずに
見ていたのだが、しばらく忘れていた何かが僕の中に沸き立ってきた。

　　♪　大人の悩みに　子供の涙　♪

　中島はそんな風に唄っている。


　ふとレンタル店のラベルを見てみると「ＩＤＥＮ　＆　ＴＩＴＹ」は
「アイドル・青春」とジャンル別けされている。
残念なことに、まだ本当のロックは日本では市民権を得ていないようだ。

　いつの日か、僕の中のアイデンティティが市民権を得られるようになったなら、
あの本を母になった友達に返そうと思う。
それまでは僕のアパートの本棚の片隅に置いておくよ。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〜May 2012　　Ｓ★ＭＯＴＯ〜