Ｖｏｌ．１
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『 ＩＤＥＮ ＆ ＴＩＴＹ 』
「きみって、少し変わってるね」
「そうかもね、群衆の中の一人と思いたくないんだ」
「そんなことないよ、平凡な暮らしが耐えられないだけさ」
「きみって、一匹狼みたいだね」
「そうかもね、お互いに意志の疎通がはかれる人しか話さないんだ」
「そんなことないよ、みんなの輪の中にうまく入れないだけさ」
「きみって、夏でもブーツを履くんだね」
「そうかもね、人と同じ格好が嫌いなんだ」
「そんなことないよ、ただ少し気に入ってるだけさ」
「きみって、マニアックだね」
「そうかもね、価値の有るものしか手に入れないんだ」
「そんなことないよ、本当に大切なものを集めているだけさ」
「きみって、いつもオートバイに乗ってるんだね」
「そうかもね、立ち止まってなんかいられないんだ」
「そんなことないよ、風が止まってしまうのがこわいだけさ」
「きみって、ディランしか聴かないんだね」
「そうかもね、流行の曲では共鳴できないんだ」
「そんなことないよ、夢中になっているだけさ」
「きみって、本音を語らないんだね」
「そうかもね、相手を試しているんだ」
「そんなことないよ、失ってしまうのがこわいだけさ」
「きみって、つめたいんだね」
「そうかもね、自分のことで精一杯なんだ」
「そんなことないよ、少し不器用なだけさ」
「きみって・・・」
誰が正しいということなんてないのさ。
僕は、その時代、その環境、その瞬間に正直に、本当にやりたいことを、
純粋な気持ちで、続けているだけなのさ。
失いかけていた何かを、まだ捜している途中なのさ。
夢を夢で終わらせたくないのさ。
人よりも、少しだけ、否定できないだけなのさ。
お気にいりのブーツを履いて、大切なアルバムを抱えて、時々、
放浪しているだ けなのさ。
本当に僕を理解してくれる人を、大切にしたいだけなのさ。
素敵なことを素敵だと、無邪気に、一緒に笑えあえたらと、思っているだけなのさ。
誰にも止められないのさ。
『 自由への幻想 』
とりあえず書き留めておこう
こののままじゃ眠れない
僕の知らない所で事は進んでいる
僕の見えない領域で計画は遂行されている
感知するか否か？
或いは、とてつもなく高い見張り塔の上より
事の進行性だけを眺めているか？
僕の領域の境界線にバリケードを張り巡らせるか？
サチライトの輝度は十分か？
本当の事を知りたいだけ
空の星はまだ輝いているか？
大地に水は溢れているか？
人々はいつものように往来しているか？
子供達は無邪気に高々と声を上げているか？
誰かの墓標の前には花は添えられているか？
本当の事を知りたいだけ
癒しの言葉は十分か？
不確かな日常は繰り返しているか？
明日への希望は満足か？
約束の橋の向こう側に虹は見えるか？
つかの間の自由は見つけられたのか？
本当の事を知りたいだけ
本当の意味を知りたいだけ
『 自由への幻想に寄せて 』
僕はバリケードの境界線を潜り抜け
高い見張り塔の上に登ってみた
サチライトを照射し
心ゆくまで眺めてみた
感知する側にまわってみた
本当の事を知りたかったから
空の星は幾千年もの昔から輝きを変えていない
大地は常に実り豊かで
人々はいつものように往来し
子供達は無邪気に最新マシンを操っている
忘れられることなく墓標の前には花がかかげられていた
見えない領域に一歩踏み入れてみた
本当の意味を知りたかったから
癒しの言葉は必要ない
不確かな日常は繰り返していればいい
僕のポケットの中には
明日への希望が満ち溢れているだろう
やっと雨も上がった
橋のたもとに立ち
また虹を見つけに行くだろう
つかの間の自由を求めて・・・
『 きまぐれな雨が降る 』
街のボスが僕に云った
お前はこの街にはふさわしくないと
僕の立場で物を考え、僕の立場で物を云う
そんな世界はやって来ないのか
常に管理され続けるのか
流され続けなければならないのか
その雨は一粒いくらですか？
きまぐれな雨が降ったんだ
この街は安全です
街のバーテンが話しかける
真実を確かめようと再び訪れた
でもドアをノックしたりしなかった
付近一帯は再開発地区に該当するのか
新しい地に草木は宿るのか
その雨は安全ですか？
きまぐれな雨が降ったんだ
工場の歯車がはずれた
煙突から煙が消えてしまった
沢山の労働者達は出稼ぎに出始めた
僕はふと考えてみた
あわてることはないと
時がくればまた汗を流すだろう
その雨はいつまでですか？
きまぐれな雨が降ったんだ
疲れ果てた老人が云う
昔は本当によかったと
今は過ちに満ちていますか
時代は変わってしまったのか
永遠のものは形を変えてそこにある
少しだけ遠くに見えるだけさ
その雨は繰り返しますか？
きまぐれな雨が降ったんだ
『 大きな風が舞っている 』
僕は線路伝いに歩きはじめた
背中のザックにたくさん詰め込んで
枕木を一歩ずつ踏みしめた
時計は壊れて止まっていた
太陽が突き刺す時も休まずに
月明かりに照らされ歩き続けた
やがて急行列車がやってきて
大きな風が舞っていた
あてのない時を歩んできた
何処かいつも自由でいられた
見知らぬ土地で隣人に出会えた
素直にたくさん色々習得した
時にはつまづいたりもした
気が付くといつも期待はずれだった
やがて急行列車がやってきて
大きな風が舞っていた
昨日を忘れて夢中に歩いた
今を正直に歩き続けた
いつもおなかをすかせていた
満たされようとはしなかった
ずっと、ずっと探し物をしていた
どこかに忘れてきたらしい
やがて急行列車がやってきて
大きな風が舞っていた