「未来に乗るクルマ」

小学生低学年の頃スーパーカーブームだった。
僕はその頃のクルマが一番好きだ。

ある日曜日に父親の車で近所を走っていた。
当時父親はミニカ５００（２スト）に乗っていた。
対向車線を青い車が走ってきた。
僕は思わず、「お父さん、あれ、何ていう車や？」と尋ねた。
すると父親は「あれは、セリカや」と呟いた。
僕は後部座席に移動し、
遠くに走り去っていく車の赤いテールランプを
見えなくなるまで眺めていた。

★セリカ★
僕は子供ながらその言葉の響きに心地よさを覚え
そのかっこよさに目の色を変えていた。
当時僕らの仲間では、
一日にフォルクス・ワーゲンを何台目撃するかを競っていた。
しかし、僕はそんなやつは眼中になかった。
赤いテールランプの青いセリカを探すのに必死だった。
だが、記憶が確かなら、あの時以来、
僕はワンテールの青いセリカを見ることがなかった。

小学生高学年頃になるとスーパーカーブームも去って行き、
街中を走る車もあまりかっこよく思わなくなった。
ちょうどメッキバンパーがなくなりかけた頃だったと思う。
どんどん車は太っていき・・・。
プラスチックのおもちゃみたい・・・。
どの車も同じ様にみえてくる・・・。
それから今日まであの頃以降の車には何の興味も持てない・・・。

２４歳の時、就職の内定をもらった。
会社から自動車の免許を取得すること要望される。
その頃、単車命だったため、車の免許をもってなかった。
仕方なく、卒業前に一発試験で免許をとった。

転勤で静岡に来た。
田舎のため、車がないととても不便。
その頃、たまたま購入した旧車の本を読んでいると
あの頃のワンテールの青いクルマが売りに出ていた。
僕はその次の日東京へ向かい、即予約してしまった。

２０年ぶりくらいに見るあの青いクルマ。
トヨタ博物館で同型の黄色は見たことはあったけれど、
本当に感動ものだった。

セリカの資料を読んでいると、
「未来の国からやってきた」とキャッチコピーが書かれている。
幼少の頃の僕は「未来に乗るべきクルマ」を見ていたのだろう。